大石芳野氏(フォトジャーナリスト)講演会への参加

日大芸術学部写真学科出身の著名なフォトジャーナリスト/写真家の大石芳野氏による「レンズを通して見たこと考えたこと?写真をまじえて世界各地での体験を語る?」と題する講演会が、お茶の水の日本大学カザルスホールで開かれました。

会場は数百名の老若男女で満席状態。ゼミからは、4年石田さん、3年若宮君と関(勇)君、卒業生の荒木君、そして後藤の5人が参加しました。
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米軍によって投下された枯れ葉剤(ベトナム)、ポルポト政権による大量虐殺(カンボジア)、米軍が残した不発弾(ラオス)、セルビア系武装勢力によるアルバニア系住民の民族浄化(コソボ)、アルカイダとタリバン掃討を目的とした米軍による爆撃(アフガニスタン)、ソ連の原子力発電所実験に端を発する爆発事故と放射能汚染(チェルノブイリ)によって、心身に深い傷を負った子どもたちや破壊され尽くしたマチやムラなどが写し込まれた44枚の写真と共に、40年に及ぶ写真家として歩んでこられた道のりや世界中で経験された様々な出来事や出会いについての大変興味深いお話しをうかがうことができました。

子どもたちの写真には心の奥底に堆積した恐怖心や憎しみ、悲しみ、絶望感といったものが見事に表現されている一方で、彼ら/彼女らの表情に未来への希望が託されてもいました。フロアから出された「どのようにしたら子どもたちのそうした表情を写真に収めることができるのか」といった主旨の質問に対して、「コミュニケーションが成立しなければ(共感し合えなかったら)シャッターは切れません」と答えられた大石さんの言葉が印象的でした。

3年関君が観察学会MLに流したメールの中で語っていた次のコメントも紹介しておきましょう。
「大石さんの写真は、『僕はお前のいる世界に存在してる。同じ空気を吸い、同じ空を見上げている』と訴えている様です。決して他人事で終わらせられない、そんな切迫感がこみあげてきました。写真のチカラに圧倒されました」。

大石さんは、『大石芳野 写真集 子ども 戦世(いくさよ)のなかで』藤原書店(2005年10月刊)の巻末を飾る「いのちの鼓動に耳を澄ます」という文章の最後を次のように締め括っています。
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「戦禍に侵された世の中を生きなければならない世界中の大勢の子どもたちが、1日でも早くその苦難から逃れてほしいと祈る思いです。そのために、わたしたちは何ができるでしょうか。現代はまさに戦世であることを真剣に考えながら、子どもたちのことを思う輪が広がっていけばと心から願っています。そのためにもこの写真のひとりひとりと、そして同じような境遇に置かれている世界中の子どもたちと、想像力を膨らませて繋がっていただけたら嬉しいことです。かれらもまたそれを待ち望んでいることでしょう」。

写真の持つ記録性と人々の心を揺さぶる「力」を再認識する良い機会となりました。それにしても、大石さんは若々しく(60歳?には見えません)、エネルギッシュで、とても素敵な方で、一目惚れしてしまいました(笑)。
文責:後藤範章(ゼミ担当者)

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