10.東京人の電車内の過ごし方 ―監視・管理空間の中の「自由」―(2019年度作品)

 土曜日の午後3時過ぎの京王線車内。のんびりとした空気感が漂っている。左手の座席に座る7人のうち、若い男女5人がスマートフォンを眺め、中年男性と若い女性が本を開いている。他の座席を見ると、目を閉じている人もチラホラ。皆思い思いに過ごしている。
 後藤ゼミでは、山手線、埼京線、京王線、小田急線の4路線で、着席中の合計1,100人を対象に目視調査を実施した。結果は、寝ていたりボーっとしている非活動者が31%、何かをしている活動者が69%(スマホ等の電子機器に接する者53%+本や雑誌等を読む者16%)だった。これらをさらに、外部接続タイプ(デジタル派)と内部完結タイプ(非活動を含むアナログ派)に大別すると、53%対47%となった。細かく見ると、実態は意外と多様だった。
 23区内で就業・通学する649万人中、鉄道利用の通勤・通学者は実に74.8%を占める(2010年国勢調査)。鉄道依存度が圧倒的に高い東京では、隅々まで監視・管理された車内で、それを全く意識せずに自由気ままに過ごすことができてしまう。何とも不思議な光景である。
写真撮影者:日本大学3年 堀 春輔
2018年5月12日(土)15時23分
京王線の車内にて撮影

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