8.忠犬ハチに群がる人間たち ―渋谷ハチ公前のメカニズム―

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 ここは誰もが知っている渋谷駅のハチ公前広場だ。忠犬ハチが主人を10年間待ち続けた「ハチ公物語」は有名な話であり、それゆえの分かりやすさと駅前という利点から、いつしか定番の待ち合わせ場所となった。しかし、実際には人が多すぎて携帯電話を使わなければ、待ち合わせ相手を見つけられないのが実状である。また、ここは都心部の駅前としては珍しく、たまり場となるような大きな広場となっており、待ち合わせ以外にも写 真のように酒を飲んだり、人間観察をしたりなど、多様な人々がたむろしている。
 では、人々がハチ公前に群がるのはなぜなのだろう? それは群衆に紛れ込むことによって、周囲を気にせずにプライベートな空間を持て、その結果 その場に居座りやすくするから。周りとの調和を無理強いされる社会の中で、ここでは調和を何ら必要としない。かと言って、無秩序で混乱しているわけでもなく、いつでもまったりしていられる。
 渋谷のハチ公前広場には、このような特異な空間が広がっていたのだ。
写真原作者:慶応大学3年 志賀紹子
2002年7月6日(土)
渋谷駅ハチ公口前(渋谷区道玄坂1丁目)にて撮影

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