1.from“こちら”to“あちら” ―精神の浄化作用(カタルシス)―
新宿・歌舞伎町が最も輝き満ちるのは、夜。日本一の歓楽街に相応しい。ネオンサインから繰り出される 光のシャワーが街を朱色に染めて、人々を欲望と解放感が渦巻く空間へといざなう。激しく往来する車が一斉に止まる度に、無数の人々が靖国通りを横断して歌舞伎町の門をくぐり抜ける。この通りは、「こちら」(伊勢丹、三越、丸井、紀伊国屋、タカノ、アルタなどが立ち並ぶ新宿3丁目側)と「あちら」(歌舞伎町)とを真っ二つに分け隔てているかのようだ。ノルマや人間関係に縛られ、世間の常識やきまりにも拘束され、仕事と時間に追われっぱなしの東京人が、我を忘れて、飲み、喰い、しゃべり、笑い、歌い、踊り、抑圧感を跳ね返す。 歌舞伎町は、人々の憂さを晴らし、ストレスを発散させ、元気を注入する、大都会になくてはならない「精神の浄化装置」。だから、今宵も多くの人々が、「こちら」から「あちら」へと渡っていく・・・。
写真原作者:日本大学4年 荒木俊之
1998年7月8日(水)
新宿・歌舞伎町前の靖国道りにて撮影
1998年7月8日(水)
新宿・歌舞伎町前の靖国道りにて撮影