2.ひとり上手 ―「東京人」への変化(へんげ)―

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 およそ綺麗で豪華とは言い難い古ぼけた部屋に、淋しそうな若者の背中ひとつ・・・。

 この写真は、大学進学を機に田舎から上京してきた学生の一人暮らしを撮影したものである。彼をはじめとする一人暮らしに不馴れな学生達は、都市社会における“孤独”を“スキル”という武器にして、このアジトで「ひとり上手」になっていく。田舎で暮らしていた頃の親のありがたみや近所付き合いは、ここでは幻想にしかならない。「何故そんなにしてまで東京にこだわるのか」。彼もいつしかそんな挫折や不安に苛まれるであろう。「東京には夢が落ちている。一旗あげてみせる」。自らを励まし、この薄汚い部屋で彼は泣き、笑い、苦しみ、そして「東京人」になっていく。東京の華やかな一面の一方では、今日もまた一人、「東京人」という蝶として飛び立つ日を夢見て、このさなぎのようなカプセルで成長をとげていく。
写真原作者:日本大学2年 花岡浩次

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