11.マゴコロ買イマス ―聞コエナクナルアノ笛ノ音―

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 ここは、江東区森下の細い路地。午後5時になると、豆腐屋の流し売りがやってくる。自転車に乗り、あの笛を吹いて。「いらっしゃい!」「息子さん大きくなったねぇ」。スーパーやコンビニには無い会話を交わしながら、「埼玉屋豆腐店」のご主人が豆腐を売り続ける。値段は絹、木綿とも150円。割高ではあるが、「おいしいから、値段は気にならないわよ」「ほぼ毎日買っているわ」と固定客の声。ここにはまだ「心と心の触れあい」が色濃く残っている。早い日は午前2時半に起きて、奥さんと一緒に「真心と愛情を込めた手作りの豆腐」を作って、毎日店と流しで売っている。そんな「埼玉屋豆腐店」だが、スーパーに客を持っていかれ、商売は先細り。後継者はなく、ご主人もあと2,3年で引退を考えていて、三代・約90年間続いた店に幕が閉じられようとしている。
 こうして、手間暇がかけられ真心のこもった商売が、東京からまた一つ消えていく。

写真原作者:日本大学4年 久我仁丈
2001年7月17日(火)17時
江東区森下5丁目にて撮影

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