12.切り捨てられる弱者たち ―東京オリンピックの裏側で―

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 古ぼけた団地の壁は剥がれ落ち、人影もない。2020年のオリンピックのメイン会場となる国立競技場の建替に伴って取り壊される、都営霞ヶ丘アパートである。元の住宅(長屋建ての平屋)を潰して10棟300戸のアパートに生まれ変わったのは、1964年の東京オリンピックの時であった。50年後の今、住民は再びオリンピックのために移転を強いられている。
 2014年7月、残っていた約160世帯を主対象とした茨城大学(稲葉奈々子准教授)の調査結果によれば、41人の回答者中、70歳以上が71%、「このままここで暮らしたい」が80%を占めた。アパートに今も住む甚野公平さん(81歳)は、私たちのインタビューに応えて、「100年に1回なら我慢もするが、100年に2回なんてとんでもない」と憤った。
 2014年10月14日現在、写真の向こう側で、約120世帯が転居せずに生活を続けている。残る人々は、「知らない土地では生活ができない」「ふる里を奪われてしまう」と訴える。しかし、そんな不安や怒りの声は、オリンピックによってかき消されようとしている。
写真撮影者:日本大学3年 丹下雅仁
2014年7月21日(月)13時頃
都営霞ヶ丘アパート(東京都新宿区霞ヶ丘町5-2)にて撮影

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