5.幻の東京オリンピック ―戦時下の1940年とコロナ禍の2020年―

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 上の写真は東京都立駒沢オリンピック記念公園の日曜日の昼下がり、正面にそびえる高さ50mの「オリンピック記念塔」の前で、ボール蹴りや自転車乗りに興じる親子の姿が目に付く。1940年の東京オリンピックのメインスタジアムがここに建設される予定だったが、日中戦争の激化で中止に追い込まれ「幻」と化した。1964年の東京オリンピックの第2会場となった時に建てられたこの塔が「オリンピック記念」の塔として、公園の名称と共にオリンピックの痕跡を留めている。
 下の写真は1964年のオリンピックでメインスタジアムとなった(旧)国立競技場(1958年竣工)が、2020年の東京オリンピックに向け国の威信と莫大な費用をかけて全面改築され、2019年11月に完成した。五輪マークのオブジェも真新しい新国立競技場である。しかし、新型コロナウイルスのパンデミックによって、2020年開催は「幻」と化し、2021年に延期された。
 オリンピックをめぐっては、熱烈支持派と疑問・批判派の間で意見の隔たりは大きい。感染症のパンデミックが世界中で一向に収束しない中、2020年12月実施のNHK世論調査では「開催すべき」27%、「中止すべき」32%、「さらに延期すべき」31%、朝日新聞の世論調査でも「来年の夏に開催する」30%、「再び延期する」33%、「中止する」32%という結果だった。
 オリンピック開催を望む人々の熱量は大幅に下がり、「幻」と化す可能性すら漂うようになっている。三度目の東京オリンピック、「夢か現か幻か、この世のことはかりそめぞ」。
(上)写真撮影者:日本大学3年 建部宏太
2020年7月12日(日)14時13分
駒沢オリンピック公園(東京都世田谷区駒沢公園1-1)にて撮影
(下)写真撮影者:日本大学4年 高橋海菜美
2020年9月6日(日)12時14分
国立競技場(東京都新宿区霞ヶ丘町10-1)にて撮影

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