1982年 エアロビクス大流行 

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アメリカ空軍で宇宙飛行士育成のため有酸素運動を提唱したケネス・クーパーが1981年に来日、それ以降、エアロビクスダンスが爆発的に普及する。有酸素運動とは十分に長い時間をかけて心肺機能を刺激し、身体の内部に有効な効果をもたらす運動のこと。水泳やジョギングもこれにあたる。この運動では体内の糖質や脂肪が酸素とともに穏やかに消費される。これは運動選手が運動能力の向上のために行う無酸素運動とは異なり、現代人が陥りやすい生活習慣病、肥満や高血圧やストレスを予防する効果があるとされた。女性では骨粗鬆症になりにくくなる。以降、こうした運動をいつでもできる会員制アスレチッククラブが東京には雨後のタケノコのように現れた。また音楽に合わせてインストラクターがステップを踏むBSTV番組が人気を集める。これは「ラジオ体操」と比較すれば明瞭なことだが、運動が「国民体育大会」などの集団主義的な色彩から脱却して、個人の一人一人にあった次元に個人主義化する過程といえないだろうか。それは同時に税金で賄われるのではなく、健康のためには費用を個人が負担するという方向でもあろう。この傾向は高齢化社会の到来とともに、一時的ではない継続的なトレンドとして今日まで持続している。だがエアロビクスにはどこか胡散臭さがつきまとう。例えば作家三島由紀夫は生前、ボディービル体操に時間を費やした。これは無酸素運動だが、では三島が有酸素運動をすることを誰がイメージできるだろうか・・・。

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