10.商品化された「食の安全」 ―“有機食品=安全”の罠―
「東京」では、数千万もの胃袋を満たすべく、膨大な食料が流通し、市場を走り回る。しかし、私たちが口にする食材は、大量の農薬や化学肥料が使われていたり、輸入食品に支えられる面も大きい(野菜の自給率は急減し始めている)。また、最近は遺伝子組み替え作物を含んだ食品も随分と出回っている。このような状況の深まりの中で、人々は食品の安全性や健康への関心とこだわりを強めている。企業の側が有機農産物に付加価値を見出して、新たな販売戦略として位置づける動きが表れるのも、こうしたことの反映である。 しかし、一口に有機(オーガニック)食品といっても中身はまちまちで、農水省が1993年に作った表示ガイドラインを見ても、(1)有機農産物、(2)転換期農産物、(3)無農薬農産物、(4)無化学肥料農産物、(5)減農薬農産物、(6)減化学肥料農産物と、6種類にも分けられる。 現状では、“オーガニック”だからといって信用(安心)できるわけでは決してないのだ。
写真原作者:日本大学大学院D1年 宮地忠幸