7.通りすぎる都会の日本人 ―匿名性(anonymity)の達人―

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 駅の周辺に1人の外国人男性が倒れていて、同国人と思われる女性が警察官に事情を英語で説明している。通りがかりの日本人はただ行き過ぎるのみである。東京には、人種的にも、社会心理的にも、多種多様な人々がいる。とりわけ絶えず膨大な人々が集まり、流れている都心の繁華街(「第三空間」)では、互いに見知った間柄の人間に合うことはまれだ。匿名性がひときわ高く、他人の目を気にせずにすむ、非常に私秘的で「自由」に振る舞える空間なのである。
 だから、道端に人が倒れていようが、苦しみうずくまっていようが、助けようと思ったり、気の毒だと感じたりすることなく、無関心のままでいられてしまう。おそらく、「東京人」ほどの「匿名性の達人」は他にいないのではなかろうか。
写真原作者:法政大学3年 平田朋子

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