33.安らぎの代金300円なり ―非「生活大国」ニッポン('95)―

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 東京一極集中が招いた地価の高騰は、サラリーマンのマイホームを郊外へ郊外へと押し出していった。その結果、都心まで2時間もかかる地域が通勤・通学圏にのみこまれるようになっている。
 写真はマイホームへ向かう帰宅ラッシュの様子であるが、普通のラッシュとは一味違っている。この電車は、乗車整理券を買えば、座って通勤・帰宅ができるという「湘南ライナー」で、通勤地獄でのゆとりを、お金と引換えに手に入れるのである。経済大国「ニッポン」では何でもお金で買えることの象徴であるかのように。しかし、写真右上の表示を見てもらいたい。「満席・売り切れ」。今日の安らぎはもうなくなってしまったのだ。
 誰もがゆとりを手に入れ、経済大国が生活大国になれる日はいつになるのだろうか。
写真原作者:日本大学2年 三瓶剛

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