東京探検団 舎人ライナー沿線

今回の東京探検団、舞台は「日暮里・舎人(とねり)ライナー沿線」。
人びとの日常をたどり、縫うようにして走る列車、それがこの「舎人ライナー」です。
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駆け抜けていく日暮里・舎人ライナー

地上5階に相当する高さで、幹線道路の真上を駆け抜けていくため、
道路沿い(だけでなく、はるか彼方まで!)のすまいやお店を“眼下”に望むという、
ちょっとした「非日常感」をもって「日常」を味わうことができるのです。

では、「日暮里・舎人ライナー」とはいったい?

2008年の春、東京都交通局(都営)によって開通された新交通システムです(お台場を走る「ゆりかもめ」とおなじ、ゴムタイヤ走行)。
日暮里駅(荒川区)-見沼代親水公園駅(足立区。23区の最北端に位置する駅です) の全長9.7kmを結んでいます。
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路線図。全13駅の区間です。

ちなみに「舎人(とねり)」は足立区の地名のひとつで、そこに路線名の由来があります。
その「舎人」とは、律令制の時代に、皇族などの警備や雑務に仕えた役職のことだそうです。

“東京23区”という大きなイメージのくくりに隠れがちですが、
そこには、沿線には、「郊外」としての一面が含まれているということ。
そしてそれは“東京23区”の一端として確かな様相をもっているということ。

舎人ライナー沿線は、郊外のなかでも、いろいろな表情を見せてくれます。
“空飛ぶ電車”に乗って、東京23区にも散らばる「郊外」をすくいとってみましょう!

今回は、以下のメンバーが参加しました。

3年:ありな、的場、高島、田中、佐野(企画者)
(ありなさんは写真にうつるのが好きでないため、記事に登場しません)
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日暮里駅 東口から出発する一行

時刻は午前11時をまわりました。全員がそろったところで、出発進行!

まずは旅の支度から。
都営まるごときっぷ(1日乗車券)を手に入れ、ホームに「上陸」します。

はじめに目指すのは、終点の「見沼代親水公園駅」。
先頭車両の展望席をゲットするべく、1本見送っての乗車をおねがいしました。
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先頭の車窓から。ここから「旅」がはじまります!
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出発前の車内にて(手前左:田中くん、手前右:的場さん、右奥:高島くん)

そうこうしているうちに、軽快な発車音が鳴りました。いよいよ出発です!
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ゆるやかな弧を描いて進む舎人ライナー(日暮里駅-西日暮里駅)

山手線も通る日暮里駅-西日暮里駅のあいだは、ビル、ビル、と都会的な光景がみられます。
この時点で圧巻だったのですが、まだまだ先はこれから。
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川辺に緑の映える「水と緑の郊外」。手前は高速道路(足立小台駅-扇大橋駅)

自然にあふれているかと思うと、まもなく辺りは「すまい」の色を帯びていき……
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駅前のロータリーと消費装置。そのうしろで“支える”のは集合住宅(扇大橋駅)
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カーディーラーにファストフード店、ファミリーレストラン…
凝縮された「消費社会」、ここにあり!(高野駅[こうや-])

見慣れた、あるいは目にしたことのある“記号(店舗の看板)”のオンパレード!
それだけ多くのチェーン店=消費装置が、足音をたてて存在しているということですね。

“ロードサイド”を“ロードサイド”たらしめる現代の「消費社会」のありかた、
そしてその縮図を、ここに読みとることができます。
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造成地でしょうか。郊外の新しい息吹が聞こえてきそうです(江北駅[こうほく-])

江北駅を過ぎ、環七こと環状七号線を飛び越えると、表情はまた一変。
レンタル倉庫や資材置き場、工場など…「ブルーカラー層」の郊外が見えてきました。
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事業所やごみ処理車の車庫、奥には畑も(谷在家駅[やざいけ-])

と思っていたところ、景色がまた一変。
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木々のベールに覆われた、都立舎人公園(舎人公園駅)

見渡すかぎり緑、みどりの公園タウンがお出迎えです。
終点は、すぐそこまで見えてきました!
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兄弟のようによく似た一戸建てとラーメン店。繁盛していました(舎人駅-見沼代親水公園駅)

20分ほどの旅を経て、見沼代親水公園駅に到着。
東京都足立区、さらにその最北端の地です。
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駅のホーム

駅名にもなった見沼代親水公園をめざします。てくてくと歩いていると…
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なぞの機械を見つけ、盛り上がるメンバー

なにかを発見したようです。
「えっなにこれ!」「すごくね?」、そんな声が聞こえてきましたが……?
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たばこが1箱300円前後!?

いつの時代のものでしょうか。
時が止まっているかのように、ノスタルジックな自販機でした。

とここで、企画者のミスが発覚。
進むべき方向と反対の方角に向かっていたため、逆戻りすることになりました。

「舎人氷川神社」に寄り道したあと、住宅街を歩き「郊外のすまい」をウォッチング。
駅から埼玉との県境まで200mほどということで、そこにも足をのばしてみました。
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道沿いには、商業用らしき電化製品の数々が売られています!
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埼玉への延伸計画を残したまま、線路がぶつ切りとなっている舎人ライナー

県境を“ここ”にも見ることができるのかもしれません。
そして一行は、見沼代親水公園へと向かいます。
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見沼代親水公園に到着!

ここは全長1.7kmに及ぶ水路をもつ、緑道に近い親水公園です。
かつてこの界隈は農業・漁労がさかんな地域で、東京でいちばんの米どころでもあったのだとか。
ちなみに「見沼代」の名は、江戸時代に「見沼」という水源から「代用水」を引いたことに由来しています。

この日は29℃という暑さでしたが、どこかひんやりとした涼しさが。
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川のせせらぎに癒されます。

「○○にご注意を」「○○はやめましょう」といった表記のポスターや看板が、
公園のいたるところに見られました。自治意識の高さをもうかがえます。

つづいて一行は、舎人公園駅へ。

都立舎人公園は、1981年に開園した広さ63ヘクタール(2014年6月現在。東京ドーム約13個分)の公園で、
敷地内にはテニスコート、陸上競技場、バーベキュー広場などがあります。
足立区の区画整理にともなって面積も大きくなっていき、現在もなお拡大しているそうです。

公園の下には、舎人ライナーの車両基地も!

私たちは、公園をふらりと散策したのち、
近くにある「倉庫群」「市場」をひと目 見てみようということになりました。
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トラックターミナル
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東京団地倉庫……屹立する建物におどろくばかり!
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北足立市場……舎人で採れた野菜も届くようです。
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館内の掲示物にびっくり!

この界隈は、物流センターのような機能をもっているのでしょうか。
休日とあってか、人影はどこにも見当たりませんでしたが、平日はきっとにぎやかなことでしょう。
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舎人公園に戻り、みんなでフリスビー!

「公園タウン」を味わったあとは、つぎの目的地・「西新井大師西駅」へ。
消費装置にあふれたロードサイド郊外を、肌で感じとる道のりです。
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ここから おとなりの「江北駅」までは徒歩の旅。
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左手に2軒、右手に1軒のファミリーレストラン、ガソリンスタンド……この一角にも「縮図」がみえます。

ほかにも、カー用品店、ディスカウントストア、衣料品店、ホームセンター、などなど……
視界に飛び込んでくるのは、私たちが日ごろお世話になっているチェーン店ばかり。
その意味で舎人ライナーは、沿線にすまう方がたの「生活路線、ライフライン」といえるのかもしれませんね。
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お店を1つひとつのぞきながら、郊外の一片をめくっていくメンバー

環七を越え、10分ほどで「江北駅」に到着。
沿道のファミレスで食事を済ませ、残るは1ヶ所のみです。

予定していたのは、扇大橋、足立小台、熊野前のうち、いずれか1ヶ所でしたが、
「足立小台駅」を訪れることになりました。
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足立小台駅の周辺地図

荒川と隅田川に挟まれた地域ですが、ご覧のとおり、部分的には川よりも細い陸地です。
そのわずかな地に、大型の家電量販店がそびえ立っていたのにはおどろき!

時刻はまもなく16時。遠くで雷が光っています。
急激に雲行きも怪しくなってきたため、引き上げることにしました。
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荒川を望む。道には「日暮里・舎人ライナー」の文字が!

今回の探検団をふりかえると、
田園風景の広がる牧歌的なまち。住宅カタログのような、数多くのすまいに支えられたまち。
はたまた、チェーン店にあふれ、消費社会のベールに覆われているロードサイドのまち、など……

ひとくちに「郊外」といっても、そのありかたは「郊外」という枠に収まりきれないほど
多様で多次元なものであると、身をもって知ることができました。

日暮里駅に着くころには、スコールのような雨に。
予定時刻となり、「舎人ライナー沿線」の旅もここにてお開きです。

長旅、おつかれさまでした!
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最後に集合写真、はいチーズ!
文責:佐野風花(2014年度3年ゼミ生)

歩み