2.住民追い出しの合理化装置―国家戦略特区による麻布台の再開発―

 台地には、森ビルが開発した高層マンション「六本木ファーストプラザ」(1993年竣工)と右手奥の高さ206mの超高層複合ビル「アークヒルズ仙石山森タワー」(2012年竣工)が聳え立つ。対して、手前の谷底部分には古い一戸建て住宅が建ち並ぶ。
 ここ麻布台1丁目は、隣接する虎ノ門5丁目と共に国家戦略特区の「都市再生特別地区」に指定され、2022年完成で高さ330m、270m、240mの超高層複合ビル3棟が建設され、個人の住宅はなくなる予定である。後藤ゼミが住民13人に行ったインタビューでは、大使館や国際的に有名な大企業が多い土地柄で、「世界を相手にする地域ゆえに他の再開発とは違う。だからやむを得ない」といった声が多く聞かれた。
 住民の多くが抱く「特別な地域」「特別な再開発」という認識が、低層の住宅を一掃し、超高層ビルが林立する「国家戦略」という格別な意味を付与された街に生まれ変わることを合理化する。人々の大地に根ざした生活空間が、また都心部から消えてなくなる。

撮影者:3年 毛森威
撮影日:2017年7月20日(木)14時26分
場所:東京都港区麻布台1-3-12付近にて撮影

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