30.対話(ダイアローグ) ―1998年の「山谷ブルース」―

1998_30_対話(ダイアローグ).jpg
 台東区と荒川区にまたがる一画に、日本経済を最底辺で支える日雇い労働者の街「山谷」がある。1960年代後半、岡林信康は「山谷ブルース」で「東京の裏町」を生きる労働者の姿を歌った。あれから30年たった 1998年。89年-91年にかけて山谷に通い、住人たちと共に働き生活を送ったアメリカ人学者エドワード・ファウラーの著書『山谷ブルース-<寄せ場>の文化人類学-』(洋泉社)が出版された。彼はこの中で、山谷と住人を徹底的に詳述することで、主流社会では「隠蔽されてしまう多様性」を浮かび上がらせる。「見かけも服装も考え方もみんな同じで、交換可能な多数の部品のような色彩のない日本人」というステレオタイプを、「山谷」を通して突き崩す。写真のような、路上に座して酒を飲みながら対話している場面も描かれている。お互いに誇りを持って、言いたいことを言い、怒り、笑い、共感する。そこには、限りない可能性と豊かな人間性が溢れている・・・。
写真原作者:法政大学3年 中村真大
1998年7月某日
山谷にて撮影

プロジェクト