1984年 焼酎に脚光

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1984年、国税庁の統計で、焼酎がウイスキーを抜いてビール、清酒に次いで第三位の消費量に達した。焼酎は税法上、アルコール度数が36%未満の連続蒸留式(甲類)とアルコール度数が45%以下の単式蒸留(乙類)に分かれる。前者は糖密を原料に低コスト大量生産に適し、チュウハイのベースなどにも使用される。後者は米や麦を原料に時間をかけて寝かし、風味ある「本格焼酎」となる。いまでは一升瓶で数万円、予約してやっと半年後に手に入る高級酒まである。この焼酎は長い歴史を持つ。1549年に薩摩藩に上陸したフランシスコ・ザビエルは、当時の民衆が蒸留酒を嗜んでいると記す。その起源は中東で「アラク」と呼ばれ、シャムを経由し琉球にもたらされ、「あらき酒」となったとする説が有力だ。そして数百年後、2003年には「本格焼酎」ブームとなり、遂に焼酎が日本酒の出荷量を抜き、ビールに続いて第二位の位置を占める。最新データでは、第一位ビール(発泡酒を含む)が全体の56%を占め、第二位焼酎が10%、第三位清酒が7%となっているが、1985年の出荷量と比較すれば、ビール(発泡酒を含む)が104%、清酒が51%、焼酎が155%となっており、焼酎が≪一人勝ち≫の様相を呈している(2006年国税庁統計)。従来は南九州を主産地に、どちらかといえば《安酒》のイメージが強かった焼酎が、日本酒のお株を奪う脚光を浴びた原因はなんだろう。食生活の変化が挙げられよう。日本の食卓でも西洋並みに動物性脂肪分の比重が増えれば増えるほど、コクのある日本酒が嫌われ、さっぱりした蒸留酒に人気が集まる。事情はすっかり定着したワインにも云えよう。なんといっても産地による個性の違いが楽しめる。加えて、焼酎では、お湯割り、水割り、ソーダ割りと多様な飲み方が選択できる。それが個人志向にマッチした。これが焼酎ブームが継続トレンドとなっている理由であろう。

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