14.門前のラブホテル街 ―聖と性の歴史的背景―

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 文京区湯島3丁目にある住宅地の一角、ラブホテルとその看板に埋もれるようにして小さな神社が建っている。関東稲荷の総本山として江戸期に栄えた妻恋神社である。
 神社の周辺という閑静な環境はラブホテルにとって好条件である上に、湯島3丁目は上野の駅や繁華街に近くアクセスが良い。また、江戸時代には近くにある根津神社や湯島天神の門前町に一大遊郭が存在しており、こうした“性”を帯びたものが入り込む下地は当時から培われていた。時代が江戸から明治以降に移ると、根津の遊郭は東京大学が移転してきたことや、それに伴い付近が文教地区としての性格を強くしていく中で消えていく。そんな中で、湯島は次第にラブホテル街へと姿を変えていった。そして、そのホテル街が膨張した終着点こそ、ここ妻恋神社なのだ。
 聖と性の遠いようで近い関係。江戸開府400年を迎えた今年、時代は変わろうとも人間の営みは変わっていないようだ。
写真原作者:日本大学4年 井原康則
2003年7月6日(日)11時30分
妻恋神社(文京区湯島3丁目)にて撮影

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