13.ファインダー ―光と影の追跡者―

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 初めて渋谷を訪れた時を、あなたは覚えているだろうか? ハチ公像を中心にして渦巻く人だかりに、東京という巨大都市が持つダイナミズムの片鱗を感じたはずだ。パシャッ。今では見慣れたこの風景に向けて、一人シャッターを切る「彼」が居た。
 駅の反対側にはQ-FRONTやSEIBUやOIOIがそびえ立つ。黄昏時のこの街は、演じ手と観客が絶えず流動する野外ステージの色合いが濃くなる。周りの群集をエキストラに見立てて、誰でも好き勝手にヒーロー/ヒロインに成り切ってしまえる。パシャッ。心を躍らせた笑顔の素敵な女の子が、仲良さげな彼氏と共に「彼」の横を擦り抜ける。
 ドカッ。スクランブル交差点で人の肩とぶつかった。謝る間もなく、相手は「彼」の存在を気にも留めない様子で人ごみへと消えていく。交差点を渡ると、人々の欲望を刺激する広告塔を掲げた店舗、ボーリング場や映画館、宵の口に乾杯を叫ぶ居酒屋が手招きをする。どこへ行っても賑やかな街の音が、人々の鼓膜を絶えず振動させる。
 やがて街を満遍なく照らす太陽の光は赤みを帯び、ビルの谷間に消えていった。今までどこにあるのかさえ定かでなかった風俗店やラブホテルに、まばゆいネオンの灯りが点り始める。光は街に影を作り出し、人々が押さえ込んでいた情念がほとばしる。欲望がうごめき、闇の波間に漂い続ける。
 夜の渋谷。孤独な人々の隠れ家。昼間とは違った賑わいがここにはある。暗闇を街灯とネオンの明かりが照らし出し、影を背負った人々が昼間の喧騒に疲れた心を癒す。
 信号を待つ「彼」の目の前で、道路に突出する男が一人。人ごみから離れた男の背後にも、極彩色のネオンの影が伸びている。向こう側にある己の隠れ家に籠もろうとしているのだろうか。パシャッ。信号が青に変わった瞬間、男は闇に輝く夜の街へと溶けていった。
 灯が点れば影が出来る。影を吸収し、巨大な闇は成長していく。光と影、そして闇を追い求めて、「彼」はファインダーを覗き続ける。こうして、渋谷のメタボリックなダイナミズムが刻印されていく。
写真撮影者:日本大学2年 小池 裕太
1、2007年6月2日(土) 18時39分
2、2007年6月2日(土) 18時48分
3、2007年6月2日(土) 21時32分
1、ハチ公像前と2、3、スクランブル交差点
(全て渋谷区道玄坂2丁目)にて撮影

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