23.都市化の代償 ―都市開発に伴う地域住民の分断化―

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 ここは小田急沿線のとある所。向かって右側の家は何やら鉄道会社に向けた旗や看板を掲げている。一方その隣には門で封鎖された空地がさらされている。一体このコミュニティーに何があったのだろう?
 現在、小田急は混雑緩和と輸送力増強のために複々線化を目指しており、それを高架化によって実現しようとしている。しかし住環境の悪化が予想されることや、何よりも線路付近の用地買収のために、住み慣れた土地を離れなければならない人たちを生み出す事になり、住民側から地下化を求める運動が展開されている。こうした事態の裏では、一筋縄ではいかない様々な思惑が交錯している。費用の問題などによる企業側の工事の進め方、「住む」権利を侵される住民、また高架化で守られる商店街もある。無関心な住民も少なくはない。通勤ラッシュの緩和は誰しもが望むことだが、都心へ向かう車窓から目にする歯抜け状態と化した土地が続く光景は、私たちに複雑な思いを沸き上がらせる。
写真原作者:日本大学4年 伊藤恭美

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