6.新宿東口の“看板前” ―パノラマビジョンのプロトタイプ―

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 様々な映画の看板が横一線にずらりと並べられてい る、新宿駅の東口付近。まるでどでかいパノラマビジョンのようだ。若者はそれを目印に友達と待ち合わせ、人々は何となく見上げながら通り過ぎていく。これらは余りに日常的すぎて、空気のように当たり前の光景となっている。しかし考えてみれば、このように壁にズラリと並んだ映画の看板は、他ではあまり見かけない。
 ここには無数の人々が集まり、彼ら/彼女らはそこへ行けば看板があることを知っている。そして、それが一つの風景として日常に溶け込んでいるがゆえに、通る度に眼をやることが習慣とさえなっている。??たかが看板、されど看板。新宿だからこそ、看板が一つのメディアとして十分に機能しているのだ。一見なにげない風景の中にも、「新宿」の断片が潜んでいる。
<写真原作者:日本大学3年 酒井麻巳子>

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