4.渋谷駅前分煙スペース ―タバコの煙に包まれるハチ公―

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 待ち合わせの定番、渋谷ハチ公前に2003年10月喫煙所が登場した。同年8月、渋谷区が渋谷駅を中心に半径約300mを「渋谷区分煙ルール」の重点地区としたことを受け、JTと区の取り組みとして設置されたものだ。目的は路上・歩行喫煙の防止と街の環境美化。JTの清掃隊による巡回の実施などもあり、設置後はポイ捨てが85%も減少した(JT調べ)。
 しかし、喫煙者と嫌煙者との共存を図るために設置された喫煙所は、逆に誰でも気兼ねなくタバコを吸える環境を作り出した。実際、渋谷に多い若い女性や高校生に対しても喫煙を促している。更なる喫煙者が吸い寄せられ、喫煙所の「周辺」でもタバコを吸う者が目立つ。その結果、分煙ルールの象徴的な拠点となるはずのハチ公前喫煙所は、待ち合わせ場所の中に全く別の目的で人が集まる空間を作ってしまったのだ。
 「喫煙空間の分化」は、「喫煙空間の膨張」と「混雑度の増加」という意図せざる結果をもたらしているのである。気が付けば、ハチ公もタバコの煙に包まれている。
<写真撮影者:社会学科2年 吉田一雄>
2005年6月12日(日)9時半頃
JR渋谷駅前(渋谷区道玄坂1丁目)にて撮影

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