28.夢と現実 ―微笑みの社会的メカニズム―

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 毎年恒例の「年末ジャンボ宝くじ」の発売日。売上高と1等当選本数共に全国一を誇る西銀座デパートのチャンスセンターには長蛇の列ができる。その前では「幸福の女神」と名付けられたキャンペーンガールが微笑みを振りまき、それを報道陣が取材してメディアを賑わす。宝くじの当たり番号は、通常「等間隔抽出法」によって決まるから、当選確率はどこでも同じ。だから、ここが一番「当たりやすい」ということはない。でも、そこで売られる枚数が全国一だから、結果的に1等も全国一多くなる。当然の話だ。にもかかわらず、当選本数が一番多いと大々的に宣伝されると、多くの人はここが一番「当たりやすい」とつい思い込んでしまう。それに引かれて並んで買う人が増えると、売り上げ枚数が増えた分だけ1等が結果的にまた増える。夢(幻想)を売る女神の微笑みが1等をさらに増やす、というメカニズムが作動しているのだ。
写真原作者:立正大学2年 北尾洋二
1997年12月1日(月)
西銀座デパート・チャンスセンターにて撮影

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