55.アメ横への買出し ―金では買えないモノがある―

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 あふれんばかりの人混み。店主らの威勢のいい声が飛び交う中、年の瀬のアメ横は、鮮魚やお節の材料を求めて各地から訪れる人々で、並々ならぬ賑わいを見せる。
 普段、我々は何気なく「買い物」をしているが、その多くは日常生活圏での「買い付け」である。しかし、年末のアメ横に代表されるように、日常生活圏外へ出向いて目当ての商品を買い求める場合は、「買い出し」と呼ぶのが相応しい。インターネットなどの普及によって購買形態が多様化し、他者との接触を介さなくても買い物ができる時代に、人々はなぜアメ横へ買い出しに行くのだろうか。
 それは、店主との駆け引き(相互行為)を経て、特別な品を手に入れる悦びにも似た気分を、皮膚を通して直に感じ取れるから。手に入るのは安価な鮮魚やお節の材料だけではない。年の瀬の風情や商売人の心意気に接することで、活気を分け与えてもらえる。
 アメ横は、1年の締め括りには欠かせない場の1つなのである。
 
写真撮影者:日本大学3年 河村雄一
2008年12月28日(日)17時07分
アメヤ横丁(台東区上野4丁目)にて撮影

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