12.ノスタルジア呑兵衛パーク―表象としての「昭和」―

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 赤ちょうちんが連なる狭い路地をノーネクタイの男性達が通る。黒く汚れたひさしの下では、焼き鳥を仕込みながら客を呼び込む店員の姿。新宿駅西口から徒歩数分のところにある「思い出横丁」である。縦80m×横30m程の狭い土地に80店舗がひしめき合う佇まいは、まさに横丁そのもの。特に写真の中通りは客と店員の声で活気が溢れている。
 戦後の闇市にルーツを持つこの酒場街は、当初、便所が設置されておらず、酔っ払いが線路際に用を足していたことから「しょんべん横丁」と呼ばれていた。1999年に発生した火災を機に再開発計画も検討されたが、周囲からの反対の声が大きく、「思い出横丁」の名を与えられ、昔の雰囲気を残したまま再建された。
 歌舞伎町、ゴールデン街、思い出横丁など、新宿の飲み屋街/歓楽街はみな縁辺部に立地しているが、その中でも思い出横丁は、「昭和」を表象する場所として巧妙に演出されており、ノスタルジックな気分に浸りたい呑兵衛たちを呼び込むのである。
写真撮影者:日本大学4年 上村哲平
2011年9月26日(月)20時32分
思い出横丁(新宿区西新宿1丁目)にて撮影

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