11.さくらやのさくら ―東京パフォーマンス劇場―

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 池袋東口、さくらやの前。サラリーマン風の男性が、あたかもその公告に興味があるかのように、チラシを持って一列に並んでいる。実は、彼らは、さくらやの従業員で、道行く人に注目してもらおうと、一種の路上パフォーマンスをしているのである。
 これは言うまでもなく、東京の巨大なターミナルステーション界隈を行き交う大勢の人々を、自分たちの店に呼び込むための手段である。さくらやへ、あるいは電器店へ行くつもりのない人も、これを見て中に入ろうという気になる人も多かろう。しかし、こうした呼び込みパフォーマンスをしたり、他との差別化を計ろうとしているのは、周りの他店も同様なのである。視点を変えると、都会の雑踏が、多種多様なパフォーマンスを同時進行で上演している複合的な劇場空間と化しているのだ。つまり、大都会そのものが、メディアとなりメッセージを帯びているのである。
写真原作者:法政大学3年 加藤由紀子

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