26.交わらない心 ―「時間泥棒」の陰影―

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 ここは、とある郊外(ベットタウン)の駅のそばにある、通勤時間帯のスクランブル交差点。人々は、皆下向き加減で、駅へ向かってやみくもに、せかせかと歩いている。それぞれに違った生活(人生)を送る個性豊かな人たちであるはずなのに、時間に追われるばかりで、表情がまるでない。彼らや彼女らは、ゆとりを失い、時計だけを見つめ、隣の人も、花壇の花も、自分の気持ちさえも見えていない。それは、『モモ』(ミヒャエル・エンデ)に出てくる「灰色の男たち=時間泥棒」に操られているかのようだ。一人ひとりの個性や特徴を失わせて、人間のロボット化を進める現代の社会では、横断歩道がたとえスクランブルであっても、人々の心は決して交わることがない。
写真原作者:日本大学4年 中村小絵子

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