10.明日のための休憩所 ―横長マンション―

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 東京都立川市の北西の外れに建つこの住宅群、バブルが崩壊する1992年に6200万円で分譲された。一戸あたりの土地面積はおよそ25坪、米軍の横田基地にほど近く、すぐ裏手には畑が広がるという立地条件。大田区へ通勤する家主のAさん(43歳)は言う。「今じゃ4000万円前後がこの辺の相場だね」。隣家との距離は50センチで、生活音が浸透し合う。日光は入らず、窓には常に目隠しのカーテンが張られている。同タイプの住宅が10軒ほど軒を連ねている光景は、まるで「横長マンション」だ。「ゆとりある居住環境」を確保するための一戸建てであるはずなのに、これでは帰宅して寝るという機能に特化した「明日のための休憩所」だ。東京における住宅の居住性の悪さ(遠・高・狭の「ウサギ小屋」)を象徴している。「後悔はしないよ。まあ30年ローンだけど、都心に出やすいからね・・・・」。Aさんの声が虚しく響いた。
写真原作者:日本大学2年 鳥海藍子
1999年7月4日(日)
東京都立川市にて撮影

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