5.日本橋×首都高の造形美 ―1964年東京オリンピックのレガシーー

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 2体の麒麟像を台座に配した大きな街灯が建ち、その上部左右に首都高の高架が走る。右手側の欄干の向こうには、野村證券本店の1・2階部分が見えている。人が佇む橋は、1911年建造のルネッサンス式石造石拱橋である日本橋で、重要文化財に指定されている。
 1964年の東京オリンピックの開催にあたり、建設費用と時間を抑えるために東京の川の上に高速道路が建設された。ことに日本橋界隈では、歴史的な景観が損なわれるとして、高架の撤去を求める運動が現在も続いている。他方、後藤ゼミのインタビュー調査によると、長年見慣れた結果、違和感を覚えない人が少なからず存在し、移設や地下化に反対する人もいた。改めて写真を見ると、近現代の建造物が織りなす「造形美」さえ漂っている。
 日本橋を覆った首都高。先進国の仲間入りを果たそうとオリンピックに合わせて急ごしらえしたのだが、半世紀以上経ったいま、東京を代表する景観として既に定着した感がある。皮肉なことに、1964年東京オリンピックのレガシーとなっているかのようだ。
写真撮影者:日本大学2年 毛森威
2016年7月18日(月)12時31分
日本橋(東京都中央区日本橋1丁目の日本国道路元標前)にて撮影

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