30. もっと奥の細道 -見えないことの風情-

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 ここは新宿区の神楽坂。かつて花街として名を馳せたこの街は、多くの文人が愛し集った街でもある。写真はかくれんぼ横丁のおにぎり屋「わかまつ」。飯田橋駅を出ると、「神楽坂」は坂下から坂上へと続き、坂道の脇には横丁街が広がる。細道に入ると大通りは見えなくなり、石畳の路地に辿りつく。この街には訪れた者を引き込む力があるようだ。昔ながらの商店や料亭は奥行きのある店構えが多く、足を踏み入れなければその先には進めない。坂道と路地が迷路の様な街をつくり、導かれるように進んでしまう。石川啄木は亡くなる前の日記に、「非常な冒険を犯すやうな心で」神楽坂を訪れた事を綴っている。近年、神楽坂に増え続けるガラス張りの店やオープンカフェには、<見えない事=奥行き>が生み出す奥ゆかしさはない。新旧が混在する神楽坂で粋な風情を残す石畳のこの路地は、ネオンに目がくらんでいては決して見つからない。
写真原作者:日本大学2年 二木麻知子
1999年7月4日(日)
新宿区神楽坂三丁目にて撮影

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