4.プロジェクトSHIBUYA ―文化の冠を外す時―

2003_04_プロジェクトSHIBUYA.jpg
 若者の街・渋谷も、駅の東口に出ると落ち着いた佇まいを見せる。東急文化会館である。1956年に渋谷駅周辺の活性化のために建てられた同会館は、4つの映画館や戦後初のプラネタリウムなどを含む複合文化施設として、世間の目と足を渋谷に向けさせた。映画も宇宙開発競争も全盛の当時、人々に与えた衝撃は私達の想像を越えたものであろう。
 しかし「見る」娯楽の主役は映画館からお茶の間のTVへ移り、アポロ11号の月面着陸(1969年)を最高潮に宇宙への関心も薄れていった。また渋谷の繁華街も西に形成されていくことで、文化会館には次第に陽が当たらなくなっていく。2001年にはプラネタリウムが閉鎖、このとき既に“文化”の冠が時流にそぐわない事を自ら認めざるを得なかった。
 そして今年、2003年6月、東急文化会館は全面閉鎖された。理由とされる「老朽化」とは、単に建物や設備のことだけを指しているのではないだろう。「文化の灯」が、渋谷の駅前から一つの時代に幕を下ろすかのようにして消えていった。
写真原作者:日本大学4年 南奈津子
2003年7月2日(水)18時頃
東急東横線・渋谷駅ホーム(渋谷区渋谷1丁目)にて撮影

地図


大きな地図で見る

プロジェクト