7.隅田川花火大会の磁力 ―ビルの谷間から花火をのぞき見る―

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 夏の夜空のもと、大勢の人々によって道路が埋め尽くされている。今宵は、東京の夏の風物詩・隅田川花火大会。第二打ち上げ会場からほど近い、都営浅草線蔵前駅から地上に出てすぐの、江戸通り厩橋(うまやばし)交差点前の光景だ。大通りにレジャーシートを敷き、はるか先まで一様に同じ方向を向き座りこむ様子は、どこか異様だ。
 写真撮影者への聞き取りによると、会場周辺には建物が多く、第一会場から打ち上がる花火は全く見えず、第二会場からのものも大きな花火だけが建物から半分ほど顔を覗かせる程度であったという。にもかかわらず、真剣に夜空を見上げている人が多かった。
 隅田川花火大会は、江戸時代から続く長い伝統を持ち、毎年2時間以上もTV中継されることもあって認知度が高く、見物客数は主催者発表で100万人近い。2万発もの花火を一目見ようと遠くから時間をかけて訪れ、幸運にも見る場所を確保できた人々は、全景が見えなくても、ビルの谷間から花火をのぞき見ることで一時の幸福感を味わうのである。
写真撮影者:日本大学3年 平井みのり
2014年7月26日(土)19時27分
都営浅草線蔵前駅前(東京都台東区蔵前3-21)にて撮影

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