6.見えない鉄道と見える軌道―ちんちん電車の安心感と存在感―

荒川線[1].jpg
 クリーム色の一両の車両、その中へ乗客が次々と吸い込まれていく。東急世田谷線と共に都内で残っている貴重な路面電車「都電荒川線」の一場面である。
 停留所にはスロープが設置され、ホームと車両との段差や隙間が小さく、足の不自由な高齢者や車いす利用者であっても乗り降りしやすい。後藤ゼミが47人に行なった調査によると、70歳以上のお年寄り24人のうち19人がシルバーパス(70歳以上は無料)を利用していた。また、停留所間の短い荒川線にあって、27人が2区間以内で下車すると答えた。買い物や通院などに利用する人が多く、日々の生活に欠かせない存在となっていることがわかる。
 路面電車(軌道)は、定時運行でバスに、容易な乗り降りで地下鉄を含む鉄道に勝る。東京では、道路(自動車)交通量の多さから、バスは渋滞で遅延が常態化し、鉄道も高架化と地下化が急ピッチで進行中である。高架や地下の駅ではホームにたどり着くのに難儀する人であっても、街の中(目に見える所)を走る路面電車からは安心感と存在感を与えられるのである。
写真撮影者:日本大学3年 堀響一郎
2012年9月3日(月)16時40分
都電荒川線町屋駅前停留所(東京都荒川区荒川7丁目50)にて撮影

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