30.対向するまなざし ―浜離宮と汐留との「借景」関係―

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 浜離宮恩賜庭園(以下浜離宮)から汐留シオサイトを仰ぐ風景である。
 徳川将軍家の庭園であった浜離宮は400年近い歴史を持つ名庭園で、東京湾の海水を引き入れた汐入の池が特徴的である。以前は庭園目当てに訪れる人々のみを迎え入れる、その意味で周りの都市空間から孤立した「小宇宙」であった。しかし、汐留の再開発によって、浜離宮とビル群とは双方共に「見る-見られる」関係に入る。シオサイトからすると、浜離宮を「借景」として組み込むことで、「都心景観」の完成度を高めた。浜離宮からすると、従来の浜辺からシオサイトに「借景」を替えることで、東京湾に面した縁辺部に立地する隠れた庭園から、巨大都市空間の内部に立地する「都心の庭園」に変質させた。
緑豊かな庭園と隣接する巨大ビル群。それぞれに身を置く者たちは、お互いの存在を目視することがないまでも、否が応でも視線を投げかけ合う。まなざしを別次元から対向させるこの空間と景観は、いかにも「現代東京的」と言って良い。
写真原作者:日本大学4年 齋藤秀和
2003年7月27日(日)13時頃
浜離宮恩賜庭園(中央区浜離宮庭園1丁目)にて撮影

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