12.人の流れと川の流れ ―作られた観光名所―

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 江戸川(幅約150m)を手こぎで航行する「新矢切丸」。手前が葛飾柴又で、対岸が千葉県松戸市の矢切地区。そう、これがあの「矢切の渡し」、東京に残る唯一の渡し船である。
 柴又は映画「男はつらいよ」シリーズの舞台としてあまりにも有名であり、京成線柴又駅から参道、帝釈天あたりを中心に観光客で賑わいを見せる。ところが、である。知名度の高さに反して見るべき所が少ないために、多くは物足りなさを感じてしまうのだ。行き場を失い、時間を持て余す人々は、歌が大ヒットしたことでこれまた有名な「矢切の渡し」へと流れつき、片道100円の味気のない簡素な渡し舟に乗って矢切へ渡る。しかし田園以外には何も無い風景を前に、すぐに柴又に舞い戻り観光を終えることとなる。
 何とも皮肉なことに、周囲の観光資源の乏しさが年間10万人もの人々をこの船に呼び込み、個人経営でありながらしっかり事業として成り立たせているのである。
 「こーれでー七百円のもーうけーでーす♪」(ちあきなおみ版「矢切の渡し」風)。
写真撮影者:日本大学4年 若宮 祐樹
2007年7月22日(日)13時21分
江戸川の河川敷(葛飾区柴又7丁目)にて撮影

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