2021年度 No.2 路上飲み―規制と自由とのせめぎ合い―
①高田馬場駅前
②東京都立戸山公園
③高田馬場駅近く
④NEWoMan新宿
コロナ・パンデミックによって、多くの飲食店は休業や時短営業、酒類の提供停止を強いられ続けている。こうした状況下にあって、自分たちで購入した酒類を公園や広場、通路などの公共空間で飲む「路上飲み」が、あちこちで見られるようになった。
路上飲みが注目されるようになったきっかけの1つは、高田馬場駅前のロータリー広場の封鎖であった。高田馬場にはJR山手線・西武新宿線・東京メトロ東西線の3路線の駅が集結し、1日の平均乗降客数が3駅合計で80万人前後にもなる都内有数の駅である。周辺には、早稲田大学、学習院女子大学、桜美林大学、東京国際大学、東京富士大学などの大学や専門学校が数多く存在し、ロータリー広場は若者の路上飲みの場となっていた。そこで新宿区は、感染防止の観点から2021年4月9日(金)に広場の3分の2を封鎖、同年5月18日(火)からは全面封鎖に踏み切った。
写真①は、6月14日(月)の夜のロータリー広場の様子である。右奥の「BIG BOX」は、ボーリング場などのスポーツ施設や飲食店・雑貨店などが入る1974年オープンの西武グループの商業施設で、高田馬場のランドマーク的な存在だ。左奥の「FIビル」は、ドンキホーテをはじめ、飲食店、書店、塾・教室やクリニック、エステサロンなどが入る商業施設で、午後10時になろうとしているのに消灯要請に反して明かりを灯している。ただ、広場封鎖という「規制」が奏功してか、ここでは路上飲みは見られない。
そこで、ロータリー広場から500mほど離れた東京都立戸山公園と高田馬場駅すぐ近くの早稲田通り横の路地の様子を撮った写真を見て欲しい。戸山公園には、写真②に写る2グループを含め6,7組のグループがいた。右側のグループは男性9人、女性3人の計12人で円になって座り、そのうち何人かは喫煙している。公園にはトイレが2箇所あるので、ゆっくり酒を飲み談笑することができる。これと対照的に写真③では、女性たちが中腰や立ったままで酒を飲んでいる。ネズミがよく出るところで、清潔でないため尻をつけずに酒を飲み、長居をせずに去っていった。ロータリー広場を封鎖しても、人々は自由に酒が飲める場所を探し出し、規制をかいくぐって滞在時間の長短に関わらず路上飲みを行うのだ。
写真④を見てみよう。4回目の緊急事態宣言が発令中の8/2(月)の夜10時過ぎの「NEWoMan新宿」前の様子である。バスタ新宿の東側に位置するショッピングモールで、いくつものグループが座り込んで路上飲みをしている。すでに閉店しているが、電気は薄らと点いてる。人通りは多くなく、左下の部分が雨に濡れて変色していることからも分かる通り、雨をしのげる場所でもある。安心して路上飲みするにはうってつけの場所である。
以上から、(1)自由に空間を占有できる、(2)トイレや水道が近くにある、(3)ある程度明るい、(4)駅からの徒歩圏内である、(5)人通りが少ないなどが、路上飲みを成り立たせる条件となっていることが分かる。
後藤ゼミでは、10月15日(金)・18日(月)に新宿で路上飲みをしている人を対象に、インタビュー調査を行った。路上飲みの理由として、「夜遅くまで店がやっていないし、探す手間を考えると手軽にできるから」（会社員2人組）、「お店より圧倒的に安いし楽だから」（大学生4人組）などといった声が挙がった。飲食店に規制がかけられたことは飲酒をしない理由にはならず、その手軽さから路上飲みが新たな「飲み」の形態となったのである。さらに、東京2020大会の開催も後押しした。感染状況が最悪となった中で開催された大会は、人々の意識や行動に影響を与えないわけがない。オリンピックは我慢せずに強行開催するのに、外出や飲酒は我慢しろという矛盾が、自粛への緩みを生みだしてしまったのである。
広場の封鎖や飲食店に対する休業・時短要請などといった「規制」と、いつでもどこででも「自由」に仲間と酒を飲み時・空間を共有し合いたい人々の思いとのせめぎ合いが、オリンピック開催の空気感を触媒として、「路上飲み」を増幅させたようである。
路上飲みが注目されるようになったきっかけの1つは、高田馬場駅前のロータリー広場の封鎖であった。高田馬場にはJR山手線・西武新宿線・東京メトロ東西線の3路線の駅が集結し、1日の平均乗降客数が3駅合計で80万人前後にもなる都内有数の駅である。周辺には、早稲田大学、学習院女子大学、桜美林大学、東京国際大学、東京富士大学などの大学や専門学校が数多く存在し、ロータリー広場は若者の路上飲みの場となっていた。そこで新宿区は、感染防止の観点から2021年4月9日(金)に広場の3分の2を封鎖、同年5月18日(火)からは全面封鎖に踏み切った。
写真①は、6月14日(月)の夜のロータリー広場の様子である。右奥の「BIG BOX」は、ボーリング場などのスポーツ施設や飲食店・雑貨店などが入る1974年オープンの西武グループの商業施設で、高田馬場のランドマーク的な存在だ。左奥の「FIビル」は、ドンキホーテをはじめ、飲食店、書店、塾・教室やクリニック、エステサロンなどが入る商業施設で、午後10時になろうとしているのに消灯要請に反して明かりを灯している。ただ、広場封鎖という「規制」が奏功してか、ここでは路上飲みは見られない。
そこで、ロータリー広場から500mほど離れた東京都立戸山公園と高田馬場駅すぐ近くの早稲田通り横の路地の様子を撮った写真を見て欲しい。戸山公園には、写真②に写る2グループを含め6,7組のグループがいた。右側のグループは男性9人、女性3人の計12人で円になって座り、そのうち何人かは喫煙している。公園にはトイレが2箇所あるので、ゆっくり酒を飲み談笑することができる。これと対照的に写真③では、女性たちが中腰や立ったままで酒を飲んでいる。ネズミがよく出るところで、清潔でないため尻をつけずに酒を飲み、長居をせずに去っていった。ロータリー広場を封鎖しても、人々は自由に酒が飲める場所を探し出し、規制をかいくぐって滞在時間の長短に関わらず路上飲みを行うのだ。
写真④を見てみよう。4回目の緊急事態宣言が発令中の8/2(月)の夜10時過ぎの「NEWoMan新宿」前の様子である。バスタ新宿の東側に位置するショッピングモールで、いくつものグループが座り込んで路上飲みをしている。すでに閉店しているが、電気は薄らと点いてる。人通りは多くなく、左下の部分が雨に濡れて変色していることからも分かる通り、雨をしのげる場所でもある。安心して路上飲みするにはうってつけの場所である。
以上から、(1)自由に空間を占有できる、(2)トイレや水道が近くにある、(3)ある程度明るい、(4)駅からの徒歩圏内である、(5)人通りが少ないなどが、路上飲みを成り立たせる条件となっていることが分かる。
後藤ゼミでは、10月15日(金)・18日(月)に新宿で路上飲みをしている人を対象に、インタビュー調査を行った。路上飲みの理由として、「夜遅くまで店がやっていないし、探す手間を考えると手軽にできるから」（会社員2人組）、「お店より圧倒的に安いし楽だから」（大学生4人組）などといった声が挙がった。飲食店に規制がかけられたことは飲酒をしない理由にはならず、その手軽さから路上飲みが新たな「飲み」の形態となったのである。さらに、東京2020大会の開催も後押しした。感染状況が最悪となった中で開催された大会は、人々の意識や行動に影響を与えないわけがない。オリンピックは我慢せずに強行開催するのに、外出や飲酒は我慢しろという矛盾が、自粛への緩みを生みだしてしまったのである。
広場の封鎖や飲食店に対する休業・時短要請などといった「規制」と、いつでもどこででも「自由」に仲間と酒を飲み時・空間を共有し合いたい人々の思いとのせめぎ合いが、オリンピック開催の空気感を触媒として、「路上飲み」を増幅させたようである。
写真撮影者：①②3年加藤唯、③④3年岡田笑門
①2021年6月14日(月)21時41分
JR東日本・西武鉄道・東京地下鉄の高田馬場駅前(東京都新宿区高田馬場1)にて撮影
②2021年7月24日(土)21時23分
東京都立戸山公園(東京都新宿区戸山2)にて撮影
③2021年9月24日(金)22時42分
高田馬場駅周辺にて撮影
④2021年8月2日(月)22時18分
NEWoMan新宿(東京都新宿区新宿4-1-6)にて撮影
①2021年6月14日(月)21時41分
JR東日本・西武鉄道・東京地下鉄の高田馬場駅前(東京都新宿区高田馬場1)にて撮影
②2021年7月24日(土)21時23分
東京都立戸山公園(東京都新宿区戸山2)にて撮影
③2021年9月24日(金)22時42分
高田馬場駅周辺にて撮影
④2021年8月2日(月)22時18分
NEWoMan新宿(東京都新宿区新宿4-1-6)にて撮影